2022年8月6日、羽田から飛行機で山口宇部に行った。宇部は母の実家で、もう15年も行っていなかった。夏休みもそんなに長く取れず、山口は遠く、なかなか足を運べなかった。本当は毎年行きたいと思っていた。
小学生のころ、両親は毎年夏休みは山口に連れて行ってくれていた。それがどれだけ大変かなど、自分は知る由もなかった。今になって、飛行機、新幹線、宿、食事、観光、移動手段などなど、めちゃくちゃ大変だったと気付いた。それで結局、自分達で行くのに15年もかかってしまった。結局従兄弟や叔父さん叔母さんが宿やレンタカー、秋芳洞への手配をみんなやってくれて、自分達は行くだけで良い状態にしてもらっちゃって、感謝で涙が出た。お昼の代金は誰が出してくれたのか、ちょっと申し訳ない。
なかなか行けないにしても甘え過ぎてしまった。
自分は虫採りがとにかく好きで、カブトムシやクワガタを採って飼ったり、大田区東糀谷の団地では見られないオニヤンマやカミキリムシ、巨大なキリギリスを標本にした。今思うと、殺してしまうのは可哀想だが、当時はクラスのみんなや学校の先生に見せたくて、罪の意識があまり無かった。挙句の果てにはオオスズメバチまで標本にした。結構命懸けだけど、みんなに見せたい思いがそれほど強かった。
標本を作って学校の廊下に展示されると人が集まったが、女子は口を聞いてくれなくなって、ちょっと期待と違った反応でがっかりした。
山口では従兄弟がいつも虫採りに付き合ってくれた。自転車借りて、大きな川を越えて、山を登り、カブトムシスポットを巡った。木を蹴ったらボトボトっと音がして、カブトムシやクワガタが落ちて来た。あと、木の下の土を手で掘るとコクワガタのメスに指を挟まれて、力強くて凄く痛かった。木の隙間をドライバーやピンセットでほじってヒラタクワガタなどの平べったいタイプのクワガタも良く捕まえた。
親戚の家で過ごす夏休みは真夏の大冒険だった。
そんな夏休みのある日、叔父さんがコウモリをくれた事があった。みんな忘れていたけれど、自分は克明に記憶している。デザートを入れるような小さな白いタッパの蓋が、多分ライターで炙って大きめの穴が開けられていた。叔父さんが笑顔で小学校低学年の自分にそれを渡してくれた。カブトムシだと思って中を除くと黒くて蠢く生き物がいた。穴が大きめだったので、そこから覗き込んだ。小さな目のコウモリがいた。
居間に行って絨毯の上に出してもあまり暴れなかった。少し弱っていたのかもしれない。近所て見つけたアシナガバチの巣が丁度虫かごにあって、蜂の子をコウモリに与えたら凄くよく食べた。
そして事件は起こった。
コウモリは蜂の子を食べて元気になり、いきなり暴れて飛んだ。居間の大きな窓が5センチぐらい空いていて、その隙間目がけて飛んだ。羽根を広げると20センチ近くあったが、窓にぶつかる瞬間に羽根を縦にしてすり抜けて、川の向こうの山まで飛び去った。トップガンみたいだった。
一瞬の出来事だった。取り返しの付かないことをしてしまった。誰が最後に窓を開けたかと言って暴れた。多分、自分だと思う。ショックで泣きじゃくって、疲れて眠った。
コウモリの超音波は優れたソナーだと知った。
その後、中学一年の時に祖父が亡くなり、その時、初めて冬の山口に行った。水遊びをしたり、タイコウチを捕まえた川には昆虫がいる気配は無かったが釣りをして楽しんだ。従兄弟、兄、自分の3人で釣りに行った。大量ではなかったが何匹か釣れた。
近所の人がいっぱい来てお葬式の手伝いをしてくれていた。山口はご近所の繋がりが強いなと感じた。自分は知らない人がいっぱいでちょっと困ったが母親の名前を出すと直ぐにみんな自分が東京から来た子だね、と分かってくれた。当時はすでに春日部に引っ越していたけど、わかりやすかったから良しとして、ハイと言っていた。
その後はもう、大分ご無沙汰してしまった。大学を出て就職前(9年ぶり)と結婚の報告で妻と(さらに7年ぶり)に行った。そして今回は結婚の報告から15年も経っていた。自分も40代半ばである事を考えると死ぬまでにあと何回も行けないと変な逆算をしたりした。
15年ぶりと分かったのは前に来た時に姪っ子とタイムカプセルを埋めていたからで、2007年10月と日付が書かれていた。書いた姪っ子も大人になっていて、自分はもうおじさんになってしまった。
大きくなったらブランド物のバッグか時計を買ってあげると書いていたけど、財力が、、、あまり多くないお小遣いをあげるだけで精一杯だった。15年ぶりなのに、もっといっぱいあげられたらなぁと、ちょっと情けなかった。
就職の前に山口に行った時、叔父さんが帰り際に3万円くれて、自分はそのお金でテレビを買ったのを思い出した。もう地デジ対応もしてないので使えないけど、何だか捨てられなくて押し入れの奥に取ってある。あの3万円は助かった。姪っ子が就職する際はそれぐらい渡したい…。
ちょっと長くなってしまったので、一旦ここまで。
読んでくれた皆様、ありがとうございました。
↑左の山までコウモリは飛んでった。
↑お宮へ続く道。
セミ採りをしたお宮
秋吉台の駐車場の料金回収箱
秋芳洞の千枚田
秋吉台
朝焼けの宇部駅