子どもが音読の宿題を持って来た。これは珍しい事ではなく、ごく当たり前の日常だ。
最近はいつも家にいる自分が聞いてあげることが多い。前は妻の仕事だった。
子どもが教科書を持って来て、横に座り音読すると
「あの坂をのぼれば、海が見える」
と言った。
えっ、と驚いた。軽い衝撃が走った。覚えている。小学生の頃、自分も同じ文章を読んだ。日常ではもうすっかり忘れていたけれど、不意に聞いて驚いた。懐かしい。
音読を聞いて、「草いきれ」が立ち込めて、坂道を越えて、また越えて、汗を風が乾かして、白い羽根を包み込んで、
音読を聞きながらラストが思い出せずモヤモヤして聴き入っていると、
「かすかなしおざいのひびきが聞こえ始めた。」
で終わる。主人公の少年は海を見ていなかった。ラストがおぼろげだったのはその為だったと分かった。
新鮮な言葉、
「草いきれ」「あさぎいろ」「海鳥」「しおざい」
最初の一行のインパクト
「あの坂をのぼれば、海がみえる」
30年前から教科書に残るだけあって、30年後に聴いても良なぁ。と思い浸っていると、子どもは宿題を終えてフォートナイトをやり始めた。
「小さな町の風景」杉みきこさんの文章。が台無し。
銃声が聴こえる。
その後、習い事の習字へ。
どういう精神状態で書をしたためるのか。